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なぜ私たちは「大量生産・大量消費・大量廃棄」を選んだのか?

なぜ私たちは「大量生産・大量消費・大量廃棄」を選んだのか?

Vol.2 ― 産業・資本主義・人間の欲望から読み解くサーキュラーエコノミー以前の世界―


「捨てること」は、果たして“悪”なのか? あるいは、私たち人類が選んだ“進化の代償”なのか。

~アジアのごみ山にて~


■ はじめに:サーキュラーエコノミー以前の問い

近年、「サーキュラーエコノミー」や「脱・大量消費」の文脈で語られるようになった、“反省的な問い”があります。

それは:

なぜ私たちはここまで「捨てること」が前提の社会をつくっているのか?

この問いに向き合うためには、単なるエコや環境技術の話を超えて、 産業史、経済、資本主義、人間の欲望といった深層の構造を見つめる必要があります。


■ なぜ「大量生産」は始まったのか?

工業化の原点は「時間と労働」の解放だった

18世紀後半、イギリスで始まった産業革命。 織機・蒸気機関・鉄道によって、「人力・手仕事」の時代から「機械による大量生産」へと社会はシフトします。

これにより、人類は次のような多大なる恩恵を手に入れました:

  • 安価で均一な製品(衣服・食器・工具)
  • 都市集中と新しい雇用
  • 余暇時間の創出と教育の普及

つまり、大量生産とは本来、「人間を手作業から解放する」進歩の象徴でした。


そして資本主義が登場する

産業が拡大し、企業が生まれ、利益の最大化が目的化されます。 資本を投入し、効率的にモノを作り、大量に売る -「成長=善」という構造が定着します。

このころから私たちの経済は、「売るために作る」サイクルに入ります。

生産 → 消費 → 廃棄 → 新たな生産

この繰り返しが「経済成長」のエンジンとされ、国家や企業、労働者までがこのサイクルに巻き込まれていくようになります。


■ なぜ「大量消費」は文化になったのか?

アメリカと戦後資本主義の「夢」

第二次世界大戦後、アメリカは世界で最も豊かな国となり、 「消費こそが自由と民主主義の象徴」と考えられるようになります。

  • 冷蔵庫、洗濯機、テレビ、車……
  • 家族向け戸建住宅、ショッピングモール、マイホームの夢
  • “欲しいものは、すぐ手に入る”というライフスタイル

これらはすべて、大量生産された商品が「欲望を満たす幸福の象徴」として受け入れられた結果です。

消費は単なる購買行動ではなく、

「私が誰かを示す自己表現」の手段に変化していったのです。


■ なぜ「大量廃棄」が常態化したのか?

廃棄は「新しい価値を生むための前提」になった

  • 流行が変わるから新しい服を買い続ける
  • 新機種が出るからスマートフォンを買い替え続ける
  • 壊れたら直すより、買い直したほうが早い、安い

これらの行動は、すべて「捨てることが前提になった商品設計」に基づいています。

いわゆる「計画的陳腐化(Planned Obsolescence)」や「使い捨て文化(Disposable Culture)」は、企業が成長を続けるための設計思想でした。

How Does Planned Obsolescence Impact Repair Culture? → Question
Planned obsolescence undermines repair by design, fostering a disposable culture over product longevity. → Question


人間の心理:「古い=劣っている」という感覚

私たちは「最新」「清潔」「新品」といった言葉に魅力を感じるようになっていきました。 それに対して「古い」「再生品」「中古」には、どこか“ネガティブな印象”を抱きがちです。

この感覚こそが、大量廃棄を加速させる“心のインフラ”なのかもしれません。


■ それでも「循環」が見直される理由

今、世界はふたたび「持続可能性」という軸で経済のあり方を見直そうとしています。

  • 地球の資源の限界(プラネタリーバウンダリー)
  • 気候変動による産業全体のリスク
  • 若者世代の価値観の変化
  • 国際規制(EU Green Deal / CSRD 等)の強化

そして何より、もうこのままでは持たない”という確かな実感。

だからこそ、サーキュラーエコノミーは単なる「環境意識」ではなく、人類が構造的に転換を迫られている「次の常識」になりつつあるのです。


■ まとめ:サーキュラーは「反・成長」ではない

サーキュラーエコノミーは、「大量生産・消費・廃棄」を否定するものではありません。 むしろ、その歴史的・社会的背景を理解したうえで、“次の成長のかたち”を設計し直す挑戦です。

  • 大量消費に代わる「利用」モデル
  • 大量廃棄に代わる「循環」システム
  • 大量生産に代わる「価値共創」の概念

今、私たちはようやく「経済をどう作るか」を根本から考え直す時期に来ています。


次回につづく…

このシリーズでは今後、捨てる経済から巡る経済へを掘り下げていきます。

次回は、大量消費・大量廃棄社会が抱える5つの深い代償

についての深掘り記事を予定しています。


📬 編集後記

この記事では、あえて“経済を悪とせず、正面から理解する”構成にしています。 ご感想、ご意見、そして「わが社ではこんな変化が起きている」など、ぜひお聞かせください。

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