欧州CE規制の先にあるもの
― テキスタイル循環をめぐる、あるEU連携の対話から―
これまで、廃棄物やプラスチックを起点に、「捨てたあとに何が起きているのか」を見てきました。
その延長線上に、衣服やテキスタイルの問題があります。
先日、EUの循環経済政策と連動した公式イニシアチブの一環であるEUとインドの関係者が参加するテキスタイル分野の循環経済ワークショップに参加しました。
この場では、テキスタイル分野における ESPR(持続可能な製品規制) や
デジタル製品パスポート(DPP) に関して、今後委任法で議論される項目や論点が、比較的率直な形で具体的に共有されていました。
耐久性や修理可能性、再生材の扱い、製品情報をどうデータとして持たせるのか。
いずれも、すでにどこかで最近よく耳にした言葉かもしれません。
このセミナーで印象に残ったのは、制度の中身そのものよりも、その前提条件でした。
繰り返し語られていたのは、「この規制はEUだけでは実装できない」という認識です。
テキスタイルは、原料から製品になるまでの多くの工程が
EUの外にあります。
インド、日本、バングラデシュ、東南アジア、南米など。
サプライチェーンの現場にいる中小企業や地域クラスターと
どう連携するかを抜きにして、ESPRやDPPは機能しない。
その現実が、かなりはっきり共有されていました。
規制というと、
「決める側」と「守る側」が分かれているように見えます。
今回の議論は、そうした構図から一歩進んでいたように感じます。
どこからなら小さく始められるのか。
一斉導入ではなく、スモールスタートの実証で何が見えるのか。
制度をどう作るか以上に、どう現場と一緒に動かすかが問われていました。
一方で、日本を含むアジアの側では、この温度感がまだ十分に共有されていないようにも感じます。
欧州の規制は遠い話。対応はもう少し先。
日本でもそう受け止められている場面も、正直少なくありません。
けれど、今回のセミナーで感じたのは、これは単なる規制対応の話ではなく、
関係性の再設計の話だということでした。
誰と、どの工程で、どんな形で関わるのか。
循環経済は、技術や制度だけでは成立しません。
人と人とのつながり方の中でしか、動き始めないのだと思います。
テキスタイルの循環は、衣服の問題であると同時に、
グローバルなサプライチェーンの在り方を静かに問い直しています。
この問いは、廃棄物の現場でも、そして、これから取り上げる
復興や再建のプロジェクトにおいても、重なっていくように感じています。
循環経済は、いま、次の段階に入り始めている。
そんな空気を感じた時間でした。