“海に行かないプラスチック”のデザインとは?
Vol.14|“海に行かないプラスチック”のデザインとは?
— Designing Out Waste: Rethinking How Things Begin —
海に出るたびに、私は波のあいだを漂う小さなペットボトルを見かけます。
拾い上げながら思うのは、「どうすれば、そもそもここに来ないようにできるのだろう」ということです。
リサイクルや清掃活動ももちろん大切です。
けれど、それらは“起きてしまった後”の対応にすぎません。
本当の問いはもっと手前――設計の段階で、流れ出さない仕組みをつくれるかどうかです。
1|流れ出すようにつくられた社会
プラスチックが海にたどり着くまでには、いくつもの経路があります。
川や街路からの流出、輸送途中のロス、観光地での放置。
しかし根底にあるのは、社会全体が「流れ出すようにできている」という構造です。
使い終わったあとの行方を誰も想定せず、責任の所在が曖昧なまま、
便利さと低コストを最優先に設計されてきた。
その結果、使うたびに少しずつ“余剰”が外へと押し出されています。
かつて「ごみ」は“捨てる人”の問題として語られてきました。
ですが実際には、“つくる時点でどう設計されているか”によって、
ごみになるか、ならないかが決まってしまいます。
2|Designing Out Waste という考え方
ヨーロッパでは近年、「Designing Out Waste(廃棄を設計からなくす)」という考え方が注目されています。
素材を分解しやすくする。
修理や再利用を前提にモジュール化する。
あるいは、そもそも包装自体を減らす。
こうした変化は技術というより、責任を前提にした設計文化です。
たとえばオランダでは、家具メーカーが「再設計可能なテーブル」を販売しています。
脚や天板が個別に交換でき、寿命を迎えた部品は回収され、再加工される。
“売り切る”のではなく、“使い続ける”関係をデザインするのです。
これは単なるサステナビリティ施策ではなく、
「どこで終わるか」を企業が引き受ける行為だとも言えます。
3|設計を社会にひらく
Designing Out Waste の思想は、製品や企業の枠を越えて、
私たち一人ひとりの生活にも関わります。
使う前に「これはどこへ行くのか?」と想像してみるだけで、
選択の仕方は少し変わります。
詰め替え容器を選ぶ。
リペア可能な製品を好む。
長く使えるものを選ぶ。
そうした小さな選択が、設計者や企業の判断を変えていきます。
“捨てない社会”は、個人の意識と制度設計の両方が
ゆるやかに響き合うことで成り立つのだと思います。
日本でも、修理やリユースを前提にした商品設計、
リフィル文化の広がりなど、静かな変化が始まっています。
それは、社会全体が「どこで終わるか」を見直し始めた兆しです。
4|終わりを見つめて、始まりを設計する
廃棄をなくすということは、単にごみを減らすことではありません。
「終わり」をどう扱うかを通して、
人とモノの関係そのものを設計し直すことです。
海に行かないプラスチックとは、
テクノロジーの話でも、管理の話でもなく、想像力の話です。
つくる人、使う人、手放す人が、それぞれの立場で
“次の行き先”を思い描く社会。
その最初の一歩が、設計という目に見えない場所にあります。
From Vision to Action
Circular Eでは、こうした「思想から実践」への転換を支えています。
企業や自治体、地域が自らの循環モデルを描き直すとき、
いつもその出発点にあるのは“設計”です。
モノづくりだけでなく、仕組みそのものを再設計すること。
それが、次の時代の「海に行かないプラスチック」のあり方だと考えています。