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欧州サーキュラーテキスタイルの現状と課題

欧州サーキュラーテキスタイルの現状と課題

― 都市の取り組みとグローバルな産業構造から見えてきたこと ―

この数週間、欧州のテキスタイル産業をめぐる議論に続けて参加しました。

ブリュッセルのEuropean Week of Regions and Citiesでは、自治体による使用済み繊維の回収とその課題。ロッテルダムのFABRIX最終カンファレンスでは、地域の循環型テキスタイル産業をどう構築するか。そしてDe HERでは、回収された資源を地域の起業家が活用する現場を見ることができました。

それぞれ立場や目的は異なりますが、共通して感じたことがあります。

欧州ではサーキュラーテキスタイルへの移行が進んでいる一方、それを産業として成立させるための課題は、まだ多く残っています。

もちろん、今回見聞きしたのは欧州全体の一部です。それでも、最近のオンラインでの議論も含めて振り返ると、いくつかの重要な問題が見えてきます。

回収が進んでも、循環が成立するとは限らない

EUでは2025年から繊維廃棄物の分別回収が義務付けられています。

しかし、自治体の現場では、回収体制の整備に加え、費用負担や選別、回収後の処理が課題になっています。

集められた衣類は、素材も品質も状態も異なります。再利用できるものもあれば、リサイクルに適したもの、処理が難しいものもあります。

そして、再生素材をつくることができても、それを購入する企業がなければ事業としては成立しません。

欧州環境庁(EEA)によれば、EUから輸出される使用済み繊維は年間約140万トンに上り、主な輸出先はアフリカとアジアです。

現地では再利用や選別、リサイクルによる経済活動が生まれていますが、一部は埋立てや野外での焼却などにつながっています。

つまり、欧州で回収したという事実だけでは、その後の資源循環まで保証されるわけではありません。

欧州の循環経済は、欧州の中だけで完結していないのです。

地域で循環型産業をつくるという試み

ロッテルダムのFABRIXでは、少し異なるアプローチが紹介されました。

都市に存在する製造企業、デザイナー、修理事業者、素材メーカーなどを結び付け、地域のテキスタイル産業を再構築しようとする取り組みです。

会場となったDe HERも興味深い施設でした。

市民が持ち込んだ不要品から再利用できるものを選び、地域の起業家が製品づくりや修理に活用しています。

廃棄物処理を担ってきた自治体の施設が、地域の新しい経済活動の拠点にもなっています。

一方、FABRIXのパネルでは、起業家たちから現実的な課題も語られました。

循環型の素材や製品を開発できても、誰が購入するのか。品質や価格、供給量をどこまで安定させられるのか。

また、長年にわたってグローバルな分業が進んできた繊維産業を、どこまで地域に戻すことができるのかという問題もあります。

地域で製造することには、雇用や技能の維持、資源の有効活用などの可能性があります。

しかし、地域生産であれば必ず環境面でも経済面でも優れている、という単純な話ではありません。

どの工程を地域に残し、どこで国際的な協力を活用するのか。

それぞれの産業や地域の特徴に応じて考える必要があると感じました。

産業を変えるには、事業として続く必要がある

今回の議論では、サステナビリティだけでなく、経済性、供給網の安定、価格の手頃さについても繰り返し取り上げられていました。

環境に配慮した製品であっても、価格や品質の条件が合わなければ市場には広がりません。

循環型の事業を始めても、企業が利益を生み出せなければ継続できません。

また、回収、製造、販売、再利用に関わる企業は、それぞれ異なる目的や経済条件で動いています。

そのため、技術や設備だけではなく、企業同士を結び付け、事業として成立させるための調整も必要になります。

FABRIXでファシリテーターの役割が重視されていたことも、こうした背景があるのだと思います。

今回の現場から感じたのは、欧州では規制や技術開発が進むにつれて、その先にある事業化の課題が、より具体的に見えるようになってきたということです。

欧州の現在地をどう見るか

日本から欧州を見ると、サーキュラーエコノミーの制度や先進的な取り組みに目が向きがちです。

確かに、欧州では政策、研究開発、自治体の実践、企業の新しい挑戦が進んでいます。

しかし、そのすべてが経済的に成立し、社会に定着しているわけではありません。

回収した資源を誰が使うのか。事業に必要な費用を誰が負担するのか。製品を誰が購入するのか。そして、循環の過程で生じる負担が別の国や地域へ移っていないか。

こうした問題を、サプライチェーン全体で考える必要があります。

これは欧州だけの課題ではありません。日本を含めたグローバルなテキスタイル産業に共通する問題でもあります。

サーキュラーエコノミーへの移行には、規制や技術が必要です。しかし、それだけでは十分ではありません。

実際に事業を担う企業や人々が、継続して参加できる経済の仕組みをどうつくるか。

欧州も、その答えを探している途中なのだと思います。

そして、この問題は、私自身がCircular Textile Daysに出展し、製品やデジタル技術を事業として展開しようとする中でも、改めて考えることになりました。

次回は、その経験から日本のものづくりの価値と、デジタル製品パスポート(DPP)の実装について考えたいと思います。

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