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欧州と日本のあいだで ― 2025年、日本の循環型経済へ移行の現在地

欧州と日本のあいだで ― 2025年、日本の循環型経済へ移行の現在地

― 欧州と日本の現場を往復する中で見えてきたこと ―

2025年、日本では「第五次循環型社会形成推進基本計画」が策定され、資源関連法の改正も議論されています。大阪・関西万博の開催もあり、循環型経済という言葉は確実に広がりつつあります。

この2ヶ月間、私は政策ラウンドテーブル、業界プラットフォーム、スタートアップの会合、地方自治体との対話に参加し、経済産業省・環境省の政策責任者や自治体の首長、業界団体の責任者の方々と直接会話を重ねる機会を得ました。

同時に、欧州に拠点を置く立場から、EU規制の構造やその背後にある思想、そして今後想定される制度の方向性について、日本の企業や自治体に共有する機会も増えています。

その往復のなかで、いくつかの重要なことが見えてきました。


1. 日本の移行は、合意形成を軸に進んでいる

EUがESPRやDPP、拡張EPRなどの制度設計を通じて移行を加速させるのに対し、日本では業界主導の対話と官民プラットフォームを通じた調整が中心となっています。

制度は、関係者の合意を積み重ねながら形成されます。

この「和」を重視する対話型プロセスは、日本の社会構造そのものと深く結びついています。

世界の中で日本の動きを理解するためには、この合意形成の構造を理解することが不可欠です。


2. 欧州は参照されている。しかし理解はこれから

日本の企業や団体は、EU規制の動向を継続的に注視しています。

ESPR、DPP、ELV規制の拡張。
それらの名称は広く知られるようになりました。

しかし実際の議論の多くは、「どの要件にどう対応するか」という点に集中しています。

規制の背後にある構造的な思想、
なぜEUがこの方向へ向かっているのか、
将来どのような市場変化が起こり得るのか――

そこまで踏み込んだ理解は、まだ限定的です。

ここに大きな余地があります。

EU規制は単なるコンプライアンス対応ではなく、産業構造の再設計を促すものです。その読み方次第で、大きなリスクにも機会にもなり得ます。

私は、欧州の制度形成の背景や今後の方向性を説明する中で、その構造的な視点を共有しています。


3. 日本の潜在力

日本には、リサイクル政策の長い歴史と蓄積があります。

現在は、リサイクル中心の循環から、設計段階から循環を組み込む真の循環型経済へと議論が広がりつつあります。

同時に、日本の強みは制度や産業能力だけにとどまりません。

壊れた器を漆で修復し、傷を隠すのではなく価値として再生する「金継ぎ」の思想。
物を最後まで使い切る「もったいない」という感覚。
修理や手入れを通じて長く使うという生活文化。

これらは単なる伝統ではなく、循環という概念を自然に受け入れる土壌でもあります。

加えて、私が長年現場で見てきた日本の強みとして、

  • 高い製造品質と生産技術
  • トレーサビリティ文化による透明性
  • 長期志向で強固な組織運営力

があります。

欧州が制度設計で示す方向性と、日本が持つ文化的な持続性の感覚が融合するとき、日本ならではの循環型社会のかたちが立ち上がる可能性があります。

規制対応にとどまらず構造理解が深まったとき、日本の実装力は単なる追随ではなく、独自の循環モデルとしてグローバルに展開されるでしょう。


4. 欧州と日本のあいだで

欧州では、アジアとの連携が重要なテーマとなりつつあります。

一方、日本では、EU規制が将来の競争環境を左右するという認識が広がっています。

両者のあいだには、依然として認識のずれと情報の非対称が存在します。

その橋渡しには、制度の表層だけでなく、思想と構造を理解する視点が求められます。

日本の動きは、いま深く理解しておくべき段階にあります。


5. 結び

欧州と日本は、異なる制度文化と意思決定構造を持ちながら、同じサーキュラーエコノミーへの移行という問いに向き合っています。

その違いを理解することは、対立を生むためではなく、接続の可能性を広げるためです。

対話はすでに始まっています。

次回は、こうした制度的な往復の中で特に動きが見られる欧州テキスタイル産業に焦点を当て、設計段階からの循環型ビジネスモデルへの移行と、国際的なサプライチェーンの変化について考察します。

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