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「捨てられる服」を規制する時代へ

「捨てられる服」を規制する時代へ

Vol.11― 欧州・フランスに学ぶ、サステナブルファッションの未来 ―


“ファッションの自由は、廃棄の自由ではない。” フランスをはじめとする欧州では、いま「衣服の寿命」を制度で延ばす動きが加速しています。


■ ファッションに対する規制が始まった理由

欧州では、ファッション産業がもたらす環境負荷・廃棄・社会問題に対して、以下の理由から「規制」の対象になりつつあります

  • CO₂排出量:ファッションは世界全体の約10%(航空・海運より多い)
  • 水使用量:Tシャツ1枚に約2,700Lの水が必要(人の飲料水3年分)
  • 廃棄率:EU圏で年間約400万トンの衣料が焼却または埋立されている
  • リサイクル率:EU内の繊維リサイクル率は1%未満

■ フランスの先進的なファッション規制・制度

① リペアビリティ・インデックス(2021年~)

  • 電子機器等に義務化された「修理のしやすさをスコア化したラベル」制度
  • 服や靴にも将来的に適用拡大が検討中
  • 目的:製品の寿命を可視化し、買い替え前提文化の是正

② 廃棄禁止法(2019年)

  • フランスでは、売れ残った衣料品の焼却・廃棄が法律で禁止されている
  • 高級ブランドも対象(Burberryの焼却問題を契機に強化)
  • 小売業者・メーカーには「再販売・寄付・リサイクルの義務」が課せられる

③ 繊維製品へのEPR(拡大生産者責任)制度

  • フランスではアパレル企業がリユースや回収の責任を負う
  • Eco TLC(現 Re_Fashion)がリサイクル率・再資源化を監督
  • 加盟企業には拠出金制度(売上に応じた負担)が課せられる

④ 「ファッションのCSR評価」の義務化(今後)

  • フランス政府は今後、「服の環境スコア」を製品ラベルで可視化する計画(2025年目標)
  • 二酸化炭素、水使用、毒性などを総合評価
  • 消費者は「買う前に製品の環境負荷を判断できる」ように

■ EU全体の潮流:テキスタイル戦略(EU Textiles Strategy 2030)

2022年、欧州委員会が発表した「持続可能な繊維戦略」では以下が明記:

政策目標

内容

長寿命・修理可能な衣類設計

2030年までに「デフォルトで循環型の衣類」を目指す

グリーンクレーム禁止

“エコ”と称するだけの広告に対して明確な証明を義務化

マイクロファイバー対策

合成繊維からの微粒子放出を抑える製品設計を推奨

強制回収制度(拡大EPR)

すべてのEU加盟国で、アパレル製品の回収・再資源化を義務化


■ ファッション業界の対応(欧州企業中心)

企業

取り組み内容例

MUD Jeans(オランダ)

リース型ジーンズモデル。修理・回収・再製品化まで責任を負う

Patagonia(米)

リペア拠点の設置、WornWearによる中古品再販売を展開

H&M(スウェーデン)

回収BOX、循環素材開発、リペアサービス提供(ただし“グリーンウォッシュ”批判も)

Decathlon(仏)

修理部品の販売、レンタル・中古再販売を公式展開


■ 規制は“経営の制約”ではなく、“新しい競争力の土台”

EUやフランスでは、上記の規制を**「サーキュラーイノベーションの触媒」**と捉えています。

メリット:

  • 修理・レンタル・サブスク型サービスへの転換機会
  • 拠出金や罰金よりも、回収インフラを自社で整備した方が安定的
  • ブランド価値向上(特にZ世代へのエシカル訴求)

■ 日本・アジアへの示唆:政策と市場のギャップをどう埋めるか?

  • 日本ではまだ焼却廃棄の規制は緩やか(多くが熱回収されている)
  • 回収制度は自主任意にとどまり、EPRの強制力は弱い
  • 欧州のような「修理文化」や「中古の社会的地位」も十分に浸透していない

だからこそ、日本発の取り組みは:

  • 中小企業や地域ブランドが「修理可能なプロダクトデザイン」を打ち出す
  • 自治体×民間×教育機関が連携して、循環型市場を創出
  • EUとの連携を視野に入れた制度適合型ブランド戦略がカギ

まとめ:未来のファッションは、規制から始まる再創造

今、ファッションは「自由な表現」から、「責任ある選択」へと進化を求められています。

そしてその牽引役となるのが、政策 × イノベーション × 消費者意識の融合です。


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